リビングウィル(2) 栄養管理
前回は心肺蘇生についてお話しましたが、今回は栄養管理について取り上げたいと思います。
栄養管理については、数日食事がとれなかったとしても、直ちに生命に危険が及ぶ可能性は低いです。
そのため、心肺蘇生のような緊急性は比較的少ないと言えます。
一方で、病気や加齢など様々な理由によって、口から十分に食事をとることが難しくなることがあります。
そのような場合に、どのような方法で栄養や水分を補うかが問題となります。
代表的な選択肢としては、以下のようなものがあります。
- 自然経過に任せる
- 点滴(末梢輸液)
- 中心静脈栄養
- 経管栄養
今回は、それぞれについて簡単に説明します。
1.自然経過に任せる
積極的な栄養補給を行わず、自然な経過に任せるという考え方です。
この場合は、脱水や栄養不足が徐々に進行し、生命に影響を及ぼす可能性が出てきます。
一方で、患者さん本人の価値観や苦痛の軽減を重視して、このような選択がなされる場合もあります。
また、この方法を選択した場合は、医療機関や施設によっては、治療方針との関係で対応が難しい場合があります。
2.点滴(末梢輸液)
これは、手や足の表面近くの血管に針を刺し、そこから水分や栄養を補給する方法です。
病院で一般的に行われている点滴をイメージしていただくと分かりやすいと思います。
ただし、手足の細い血管では、高濃度の栄養を長期間投与すると血管を傷める可能性があります。
そのため、十分なカロリーを補給することが難しく、長期的な栄養管理には限界があります。
また、栄養状態が悪化すると、血管内に水分を保つ力が低下し、むくみ(浮腫)が目立つことがあります。
3.中心静脈栄養
中心静脈とは、心臓の近くにある太い静脈です。
この血管には全身からの血液が集まるため血流が豊富で、高濃度の栄養を入れてもすぐに希釈されます。
これを利用した方法が中心静脈栄養です。
カテーテルは主に首、足の付け根、肘などの静脈から挿入し、心臓近くに留置します。
この方法では、末梢輸液では難しい高カロリー輸液が可能となり、長期間の栄養管理を行うことができます。
一方で、以下のような問題点があります。
- カテーテル挿入時に血管や周囲組織を傷つける可能性がある
- カテーテルに細菌が付着し、感染の原因になることがある
- 長期間使用すると消化管機能が低下することがある
などです。

4.経管栄養
経管栄養とは、胃の中へ管を入れ、その管を通して栄養剤を投与する方法です。
代表的な方法として、以下の2つがあります。
・経鼻経管栄養
鼻から細いチューブを入れ、
鼻 → のど → 食道 → 胃
という経路でチューブの先端を胃内に留置し、栄養を投与する方法です。
比較的簡単に行えますが、チューブによって鼻やのどに違和感を生じることがあります。
・胃瘻(いろう)
お腹から胃へ小さな穴を開け、そこからチューブを胃の中に入れて栄養を投与する方法です。
チューブが鼻やのどを通らないため、経鼻経管栄養と比べて不快感が少ない場合があります。
また、チューブ交換の頻度が比較的少ないという利点もあります。
一方で、胃瘻を作成するためには、内視鏡などを用いた処置が必要となります。


栄養管理を考えるということ
医学の進歩により、口から食事をとることが難しい状態でも、様々な方法で栄養や水分を補給できるようになりました。
しかし、それぞれの方法にはメリットだけでなく、身体的負担や合併症のリスクもあります。
また、患者さん本人が、
- どこまでの治療を希望するのか
- 生活の質をどのように考えるのか
によって、望ましい選択は異なります。
意識がしっかりしていて、ご本人の意思を十分に伝えられる時には、医療者やご家族と相談しながら治療方針を決めることができます。
しかし、そのような時間的余裕がない場合もあります。
その時に備えて、
「どのような栄養管理を希望するのか」
を、一度考えてみてはいかがでしょうか。


