リビングウィル(4) 何を書く?〜「がんばりすぎない」書き方〜

前回は、リビングウィルは作成して終わりではなく、ご家族や医療関係者と内容を共有し、いざという時に意思が尊重される環境を整えておくこと(ACP:人生会議)が大切である、というお話をしました。

では、実際にリビングウィルを作成しようとしたとき、具体的にどのような内容を書けばよいのでしょうか。

いざ書こうとすると、「将来起こるかもしれないあらゆる医療処置について、細かく決めておかなければならないのでは」と身構えてしまう方も多いかもしれません。

しかし、結論から申し上げますと、細かい点まで全てを事前に決めておく必要はありません。

将来起こりうる状態を全て予測することは、専門家であっても不可能です。

リビングウィルを作成する上で大切なのは、絶対に外せない大きな方針だけを示し、あとは状況に合わせて柔軟に構える「がんばりすぎない」という考え方だと思います。

今回は、その具体的なポイントを3つに絞ってお伝えします。


1.医療処置について決めるのは「心肺蘇生」と「栄養管理」の2つだけ

医療処置についてご家族が最も決断に迷い、重い負担に感じるのは、主に次の2点です。まずはこの2つについて、ご自身の希望を整理してみましょう。

 

1)心肺蘇生(CPR)

万が一、心臓や呼吸が止まったときに、胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸器による管理を希望するかどうかを決めます。

この部分については、当ブログ内の心肺蘇生の記事を参考にして、

① 心臓マッサージ

② 気管内挿管およびその後の人工呼吸器による管理

を希望するかどうか決めてください。


2)栄養管理

口から食事がとれなくなったときに、胃ろうや経管栄養、輸液などの人工的な手段による栄養・水分補給を希望するかどうかを決めます。

これについては、当ブログ内の栄養管理の記事を参考にしてください。

 ① 中心静脈栄養

 ② 経管栄養

  a)経鼻経管栄養

  b)胃瘻

 ③ 末梢輸液

について希望の有無を決めてください。

これ以外の医療行為についても希望を記載することはできますので、決めておいてもよいかとは思います。しかし、心肺蘇生や栄養管理に比べると、ご家族等に判断を委ねたとしても、それほど大きな精神的負担にはならないことが多いと思います。

まずは上記の2つを決めておけば十分ではないかと思います。

もし可能であれば、「なぜそう思うのか」という理由を余白に一言コメントとして書き添えておくと、ご家族がその判断を受け入れる際、納得しやすくなると思います。


2.「終の住みか」にはこだわらず、柔軟に

ネットなどで見かけるリビングウィルの書式には、最期をどこで迎えたいかを書く欄が設けられていることがあります。

しかし、いざその時が来たときには、ご本人はすでに判断能力を失い、自ら意思表示をすることが難しくなっていることが少なくありません。また、希望した場所で療養できるかどうかは、介護を担う方々の状況や受け入れ側の環境に大きく左右されます。

そのため、療養場所についてはあまり細かく縛らず、

「自宅」

「現在入居している施設」

「その他、自分が希望する場所」

などの大まかな希望を記しておき、

「その時の状況に合わせて、周りの方に無理のない選択をしてほしい」

という一文を添えておくのが、残される方への思いやりであり、現実的なアプローチではないかと思います。


3.予測できない細かい点は「代理人」に託す

病状は刻一刻と変化するため、すべての事態を想定して指示書を作ることはできません。

だからこそ、最も重要になるのが、

「ここに書いていない細かな判断が必要になった場合は、私の信頼する〇〇の判断に委ねます」

と明記しておくことです。

ご家族や信頼できる方を、自分に代わって意思決定の参考となる人として指名し、日頃からその方へ、

「自分はどう生きたいか」

「何を大切にしているか」

といった価値観を伝え、共有しておけば、その方が「本人ならどう考えるだろう」と考えながら判断してくれると思います。

まさにこれこそが、最大の備えであるACP(人生会議)に他なりません。

時には、その判断が、ご本人が元気な頃に想定していたものと異なる結果になることもあるかもしれません。

でも、それはそれでいいじゃないですか。

信頼する方がご本人ならこう判断するだろうと、一生懸命考えて出してくださった判断なのですから。

リビングウィルは、周りの方を縛る厳格な指示書ではなく、迷ったときに道を照らしてくれる「羅針盤」のようなものです。

すべてを完璧に書き上げようと気負う必要はありません。

まずは一番大切なポイントだけを記し、信頼する人に想いを託すことから始めてみてはいかがでしょうか。

上記フローチャートで方針を整理したら、各組織が公開しているリビングウィルの様式を利用して、実際の書類作成に進んでみてください。

以下に、いくつかの組織からのダウンロード先を載せておきます。

全てを埋める必要はありません。埋められるところだけで十分です。

書式の定めはないので、ご自分で独自に作られても問題ありません。

そして、大事なことは、その内容を周りの方に伝えておくことです。


リビングウィルの様式(ダウンロード先の例)

リビングウィルの書式に法的な決まりはありません。ご自身が使いやすいものを選んで作成してください。

日本尊厳死協会

リビング・ウイルについて

日本尊厳死協会「リビング・ウイルとは」⁠

※協会独自のリビング・ウイル(尊厳死宣言書)を利用できます。 

松本市医師会

わたしのリビングウィル(事前指示書)

松本市医師会「わたしのリビングウィル(PDF)」⁠

※A4サイズで印刷しやすい事前指示書です。 

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