健康診断で腎機能が悪いといわれたら

健康診断の結果を聞きに行って、「腎機能が低下している」といわれて不安になったことはありませんか?

一般的な健康診断では、血液検査の「Cr(クレアチニン)」や「e-GFR(推算糸球体ろ過量)」といった数値をみて腎機能を判断します。ここでは、それぞれの数値の意味と、異常を指摘されたときの考え方について解説します。

1. Cr(クレアチニン)とは何か

クレアチニンは、筋肉を動かしたあとに発生するいわば「老廃物」です。 筋肉が収縮するためには、ATPというエネルギー源が必要です。筋肉内でこのATPを作り出す際、「クレアチン」という物質が使われます。

使われた後のクレアチンは「クレアチニン」へと変化し、不要な物質として腎臓から尿中へ排泄されます。正常であれば、作られる量と排泄される量はほぼ一定になるため、血液中のクレアチニン濃度も一定の値に保たれます。 しかし、腎臓の働きが悪くなるとクレアチニンの排泄がうまくできなくなり、血液中に溜まって数値が上昇するため、腎機能の評価指標として用いられています。

2. クレアチニンと筋肉量の関係

ここで注意が必要なのは、「筋肉量」の影響です。 筋肉量の多い人ではクレアチニンの産生量も多くなります。一方、腎臓の排泄能力が筋肉量に比例して増えるわけではないため、産生と排泄が釣り合う血液中のクレアチニン濃度が、筋肉量の少ない人より高くなることがあります。

このため、クレアチニンの数値が高い場合、「本当に腎機能が悪くて数値が高いのか」、それとも「単に筋肉量が多いために数値が高いのか」が、これだけでは判別しにくいという弱点があります。

3. e-GFR(推算糸球体ろ過量)とは

これまでの説明から、クレアチニンは筋肉量によってベースの値が変わってしまうため、単純に評価できないことはご理解いただけたと思います。一般的に、高齢者は筋肉量が少なくなるためクレアチニンは低めになり、男性は女性よりも筋肉量が多いため高めに出やすくなります。

そこで、年齢と性別による筋肉量などの差を考慮し、統計的に補正を加えた腎機能の指標として「e-GFR(推算糸球体ろ過量)」が使われるようになりました。

本来のGFR(糸球体ろ過量)とは、「1分間に腎臓がろ過できる血液量」のことで、正常値はおよそ100ml/分です。この数字が低いほど腎機能が悪いことを意味します。しかし、正確なGFRを求めるには特殊な検査が必要なため、健康診断では年齢・性別・クレアチニン値から計算した「e-GFR」が代用されます。

ただし、e-GFRもあくまで年齢と性別で補正しているだけです。そのため、筋肉質の人はクレアチニンが高いためe-GFRは低く(=腎機能が悪いように)出やすくなります。逆にかなり痩せている方は筋肉量が少ないため、e-GFRが高く(=一見、腎機能が良いように)見えてしまうことがあります。このように、体型によってはe-GFRでも正確な評価が難しいケースがあるのです。

4. シスタチンC

健康診断のクレアチニンやe-GFRだけでは、筋肉量の影響で評価が難しい場合がある。では、どうしたらいいのでしょうか?

それを補完してくれるのが「シスタチンC」という物質の測定です。 シスタチンCは、全身の細胞から一定の割合で作られるタンパク質で、正常な腎機能であればほぼ100%ろ過されて分解されます。重要なのは、シスタチンCの産生量は筋肉量の影響を受けないという点です。

そのため、「クレアチニンが高いのは筋肉量の影響かもしれない」と思われる場合には、シスタチンCを測定することで、真の腎機能を確認する一つの有効な手段になります。 ただし、シスタチンCも加齢や性別の影響を少なからず受け、炎症や薬剤、脂肪量などの影響も受けるため、決して完全(万能)な検査というわけではありません。必要に応じて、さらに精密な検査が必要な場合もあります。

まとめ

健康診断で「クレアチニンが高い」「e-GFRが低い」と指摘されても、必ずしも「=腎機能が悪い」とは限りません。筋肉量などの影響で、たまたまそのような結果になっているケースも十分に考えられます。それを確かめる方法として筋肉量に左右されない「シスタチンC」の測定などもありますが、これも完璧な方法ではありません。

一番大切なのは、健康診断の数値だけで自己判断して不安になりすぎないことです。 医師はこれらの数値だけでなく、体型、過去の数値からの変化、他の測定結果(尿タンパクなど)、これまでの病歴などを総合的に見て判断します。もし異常を指摘されたときは、放置せずに早めに医療機関を受診し、ご自身の本当の体の状態について医師にしっかり確認してもらうようにしましょう。

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