リビングウィル(1) 心肺蘇生
リビングウィル(Living Will)とは、意識がないなどの理由で患者さん自身が治療方針を選択できない時に備え、あらかじめ希望する医療や希望しない医療について意思を示しておくものです。
これは、「人生の最終段階でどのような医療を望むのか」を考えるための一つの方法でもあります。
リビングウィルで考えること
リビングウィルでは、
- できる限り自然な経過を望む
- 命を延ばすために可能な限りの治療を希望する
といった両極端の考え方があります。
もちろん、実際にはその中間を選択することもできます。
例えば、
- 心臓マッサージは希望するが人工呼吸器は希望しない
- 回復の可能性が高い場合のみ積極的治療を希望する
など、状況に応じた考え方もあります。
まず考えること ― 心肺蘇生について
こうした判断が必要になるのは、心臓や呼吸が停止しそうになった時が多いため、まず考える必要があるのが心肺蘇生(CPR)です。
心肺蘇生には主に、
- 心臓マッサージ
- 気管内挿管
- 人工呼吸器の使用
があります。
これらは、呼吸や血液循環を維持しながら、原因となっている病気や状態に対する治療を行うための処置です。

ただし、心肺蘇生を行っても、すべての患者さんが回復できるわけではありません。
年齢や基礎疾患、心停止の原因などによって、回復の可能性は大きく異なります。
心臓マッサージについて
心臓マッサージでは、胸を強く圧迫して血液循環を維持します。
その際、肋骨や胸骨が折れることがあります。
特に高齢者では骨が弱くなっていることも多く、骨折が起こりやすい傾向があります。
また、まれに折れた骨によって肺などの臓器が損傷することもあります。
気管内挿管と人工呼吸器について
気管内挿管は、肺までの空気の通り道を確保するために行われます。
口から気管へチューブを入れるため、強い不快感や苦痛を伴うことがあります。
そのため、多くの場合は鎮静剤や麻酔を使用します。
また、チューブが声帯を通過するため、挿管中は通常、会話をすることができません。
気管内挿管後は、人工呼吸器を使用して呼吸を補助します。
人工呼吸器と治療方針
人工呼吸器を使用した場合、患者さんとの意思疎通が難しい状態が続くことがあります。
また、人工呼吸器を中止するかどうかについては、医学的・倫理的・法的な観点から慎重な判断が必要になります。
現在の日本では、終末期医療に関する考え方やガイドラインは整備されつつありますが、人工呼吸器の中止は「患者さんの死につながる行為」と受け取られる可能性もあり、状況によっては刑事問題へ発展することが懸念される場合があります。
実際に、終末期医療が刑事事件として捜査対象となった事例もあります。
そのため、医療現場では人工呼吸器の中止に対して慎重にならざるを得ず、一度装着した人工呼吸器を中止することには大きな心理的・倫理的負担が伴います。
実際には、患者さん本人の意思、家族の考え方、病状、医療チームの判断などを踏まえながら検討されます。
そのため、事前に「どこまでの治療を希望するか」を考えておくことには大きな意味があります。
リビングウィルを考えるということ
医学は進歩しており、多くの治療によって命を支えることが可能になっています。
一方で、治療によっては苦痛や身体的負担を伴うこともあります。
また、回復が難しい状態でも、医療によって生命を長く維持できる場合があります。
意識がしっかりしていて、医療者やご家族と十分に話し合える時には、自分で治療法を選択することができます。
しかし、そのような時間的余裕がない場合もあります。
その時に備えて、
「どの程度までの治療を希望するのか」
を、一度考えてみてはいかがでしょうか。
次回は、「栄養管理」について取り上げたいと思います。
リビングウィルについての一般的な情報は、日本尊厳死協会 をご参照ください。


