行政書士試験のリアル:理系出身者が感じた「合格率10%」の壁と本質的な勉強法
行政書士試験の合格率は例年10%程度と言われていますが、実際に受けてみた感触としては、「よく10%も受かるな」と思うくらい難しい試験でした。
インターネット上では、この合格率の高さについて「司法試験を本命とする受験者が合格率を引き上げているからだ」といった評価も見られます。真偽のほどは定かではありませんが、少なくとも法律を学んだことがない素人から見れば、この10%の中に入るには相当の覚悟を持って勉強しなければ難しいと感じました。
私は理系の出身であり、法律についての教育はほぼ受けていないゼロからのスタートでした。そこで、インターネットで講義を聞くことができる、ある通信教育サイトを受講することにしました。
通信講座が謳う「合格率50%」のからくり
数ある中からその通信講座を選んだ理由の一つは、「受講生の合格率は50%程度」と宣伝されていたからです。「受講生の2人に1人が合格するなら、自分もその50%に入れる可能性が高いだろう」と期待したのです。
しかし、行政書士試験が終わった後、そのサイトから届いたのは「来年も頑張りましょう!受講料を割引します。」という営業メールのみでした。私の合否を尋ねるメールはただの一通も来なかったのです。
他のサイトの実態はわかりませんが、少なくとも私が受講した講座の「合格率50%」の裏側はこういうことでした。都合の良い数字だけを集計している可能性もあるため、宣伝されている合格率はあまりあてにしない方が良いでしょう。
「パターン暗記」や「割り切り」が通用しない理由
とはいえ、その講座の問題集自体はかなり洗練されており、非常に勉強しやすいものでした。(解答の質については少し気になりましたが、これについては後述します)。
講座の中で、講師はしきりにこう強調していました。 「しょせん資格試験ですから、あまり深みにはまらず、割り切ることも大事です」
しかし残念ながら、この言葉に素直に従って勉強をしてしまうと、合格する可能性はあまりないと思われます。なぜなら、行政書士試験の問題は、過去問の使い回しではなく「新作」に近い問題がほとんどだからです。
したがって、過去問の答えを覚えるような「パターン認識」で解こうとしても、本番では全く歯が立ちません。
過去問学習の本質は「最高裁判例」の理解にある
では、「過去問を勉強する意味はないのか?」というと、決してそういう訳ではありません。
日本の裁判における法律の解釈は、最終的には「最高裁の判断」が基準となります。下級審は最高裁の判例に逆らう判決を出すことはできませんし、最高裁自身が過去の判例を変更する場合には、大法廷で慎重に審理することになります。
つまり、日々の訴訟内容は変わっても、それに対する判決は結局のところ「過去の最高裁の判例」に基づいてなされるのです。裏を返せば、過去の判例をきちんと理解していれば、どんなに新しいケース(新作問題)を出されても、これまでの判例の応用で対応できるはずです。
だからこそ、過去問を解く際には、正解・不正解だけを確認するのではなく、「できるだけ判例を読んで内容を深く理解すること」が不可欠になります。過去問にも出ないような全ての判例を網羅する必要はなく、過去問に出てくる重要な判例を深く掘り下げるだけで十分だと思います。
ここで先ほどの「問題集の解答の質」の話に戻ります。 市販の問題集や講座の解答は、判例だけが書かれていて「判例の解釈や理由づけ」までは詳しく書かれていないことが多く、個人的にはなぜそういう判決が出るのか理解できないことが多々ありました。法律の素人がなぜそういう判決になるのかその理由を自力で調べようとすると大変な労力がかかります。しかし、まさにそこまでの深い知識と理解を求めているのが、行政書士試験なのです。
市販の問題集使用時の注意
市販の問題集は、先ほど述べたように判例は載っていてもその解釈まではされていないことがほとんどですので、理解できない部分はインターネット等で自分で調べるしかありません。多くの場合は、誰かが解説をしてくれているので、根気よく探すことが大事です。
もう一点注意しないといけないのは、市販の問題集では商法の問題が少なすぎ、十分な対策が取れません。
このため、私は商法の司法試験短答式用の薄い問題集を一冊解きました。試験範囲は、司法試験より狭いので、関連する部分だけ解けば十分だと思います。
この効果か、本試験では5問中4問正解でした。
記述式問題へのシンプルな対策
最後に、記述式問題への対応について簡単に述べておきます。
解答枠が40字程度であるため「いかにキーワードを詰め込むかが大事」と言われがちですが、文章を作成する前に、まずは「誰が」「誰に」「何をするのか」を明確に意識した方が良いと思います。
裁判とは、誰かが誰かに対し何かを訴える手続きです。したがって、「何か(アクション)」だけがキーワードになるわけではなく、原告である「誰か」や、被告である「誰に」も非常に重要なキーワードになります。
原告・被告といった主体が抜けてしまうと大幅に減点される可能性が高いため、この基本構造を外さないように注意することをおすすめします。
まとめ
- 宣伝文句に注意:試験対策講座が公表している「受講生合格率」は、追跡調査の仕組みなどから数値の実態が怪しい場合がある。
- 解答の丸暗記はNG:市販のものも含め、問題集の解答(結論)を覚えるだけでは試験対策として不十分。
- 判例の「理解」が必須:過去の判例の解釈や理由づけを深く理解していなければ、本番の新作問題には対応できない。
- 商法については、市販の問題集では対策が十分できないので、他資格用の問題集で補う。
- 記述式は基本構造を外さない:記述式の解答は、キーワードの羅列ではなく「誰が・誰に対し・何をするのか」を正確に書くことを意識する。


